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電源回路設計は、電子・電気機器にはなくてはならないものであり、さまざまな機器に求められる仕様を満たせるように設計する必要があります。 本記事では、電源回路設計や電源回路設計エンジニアのニーズや重要性が高まった背景について解説します。
電源回路はこの半世紀の間、時代の流れに沿って、大型なものから小型のものへとシフトしていきました。現在に至ってはニーズの多くはスマートフォンやPCなどに内蔵されている超小型の分散型トポロジーに至り、非常に複雑な要求が求められるようになっています。
現時点で電源回路設計の需要が高いのは、やはりスマートフォン・PC・タブレットなどのモバイル端末と車載機器、それとIoTデバイスです。
スマートフォンやPCなどをはじめとしたモバイルデバイスは先進国では今や1人1台が当たり前になってきました。
スマートウォッチなど超小型のものも含めると、1人1台以上とも言えます。
デバイスに対するアプリケーションの負荷などによる起因もありますが、発熱対策や長時間利用のための電源効率の向上も求められています。日本でも、PC・サーバーなどIT関連機器で消費される電力は電力消費量全体の4分の1を占める日もそう遠くないとされており、電源回路における電力損失の軽減設計に関わることは、SDGsを支援するうえでも重要な任務となるでしょう。
車載機器、もとい車は今後電気自動車(EV)の普及だけでなく、衝突回避や自動運転などの指向性を持った技術の搭載が当たり前になってきていることから、より電子的な機器へと変化していきます。
当然、ハイテクノロジーになればなるほど、安定した動作が求められます。
車や飛行機・鉄道など、人を輸送するためにある機器の電源回路設計は、人命に直接影響があるため、より高度な安全性・耐久性が求められ、シビアな仕様となっています。また、特殊な方向性としてQi規格などをはじめとした無線給電なども拡がり始めています。
日本では航空法などの影響で導入できませんが、アメリカなどではすでにドローンによる自動空輸の試みや、販売の無人化などに多くの電子機器が使われています。
それらはすべて無線給電や、長時間の稼働を前提として使われているため、電気効率や給電方法といった電源回路に関わる重要性はさらに高まっています。
IoTデバイスの身近な例としては、電力会社などが取り付けるスマートメーターなどが挙げられます。
総務省の発表(総務省情報通信白書)によると、IoTデバイスは2020年時点では253億台あまりが利用されています。
2023年には340億台がネットワークに繋がるとされ、ネットワークに繋がるということは電源がONでなくてはならず、電源回路が搭載されています。
COVID-19に伴う世界的な半導体不足で増加が伸び悩んでいる中ではありますが、それでも3年の間にデバイス数が80億台以上増えると予想されていて、非常に大きなシェアとなっています。
IoTデバイスはとにかく長期間安定したノイズを出さない特性が求められますが、用途によって、晒される環境・形状が大きく変化します。
電源回路において、もっとも基本と言えるのは「直流・交流」「昇圧・降圧」「整流」であり、このあたりは中学や高校で学ぶ範囲です。
しかし、実際に設計に携わるようになると、SiCやダイオード、コンデンサ、トランジスタ、MOSFETなどの部品特性に加え、EMS/EMIなどノイズ対策も考えなくてはなりません。
各部品特性を見るにはデータシートを見ることになりますが、それらの読み方も把握しなくてはなりません。
何より設計したものが設計通りに動いてくれるか、何かおかしな挙動があった際にどこがネックになっているか、といった逆算やトラブルシューティングができなくてはなりません。そして、先述のとおり、電源回路は電気を使う機器であればすべてに搭載されていて、それら一つひとつの傾向、サイズによって求められる特性が異なります。
数字や理論だけではなく、搭載される製品がどのような環境で使われるかを理解していないと、求められる仕様や設計意図を理解しての設計は難しく、今後の電源回路設計に関してはそういった広範的な情報の把握も重要になるでしょう。
電源回路は、一般の方からすれば目立たず、しかし世の中にはなくてはならないものです。「目立たない」ということは、その専門性に対して興味を抱く人数が多くなく、電源回路設計エンジニア志望の絶対数が減ってしまう、という課題があります。しかしながら、ここまでご説明してきたように電源回路の需要は増加しており、また労働者人口の減少も影響し、需要に対して供給が足りていない現状があります。
加えて、電源回路の基礎知識を持ち合わせたエンジニアを一から育成するには非常に時間と労力のかかるものとなります。
設計業務は自動化ができません。必ず人が行う必要があり、確認も人によってされる必要があります。特にハードウェア設計はITシステムなどソフトウェア設計の世界とは違い、オフショアの活用などが難しくあります。
これらのことから、日本で設計できる労働者を増やすことは、急務かつ難易度が高まっていると考えられます。
電源回路設計は、今後ますます小型化・複雑化していくとともに、需要は高まると予想されます。需要に対して、電源回路設計エンジニアが不足するという課題は、人が設計するものである以上なかなか解決しません。
消費者が安全に電子・電気機器を使えるよう、また消費者にとって便利であるよう、電源回路設計エンジニアの育成は世界的に重要であると言えます。
著者プロフィール
利根川 宏之
重電系製造業に16年勤務。製造現場での製造業務、検査業務、備品管理、ヘルプデスク、システム開発、デジタル化支援業務に携わり、その後2年半システム開発会社にてプリセールスエンジニアとしてシステム設計業務に従事。
現在は外資SIerにて医療系製造業のIT運用保守の業務マネージャをする傍ら、執筆活動中