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機械設計とは。どんな流れで進めるのか?

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「機械設計」はなんとなくイメージできても、具体的にどのように進めるのかわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、機械設計の基礎知識と一般的な流れ(工程)について解説します。

機械設計とは?

まず「機械」とは、一般的に「動力を受けて、目的に応じた一定の運動・仕事をするもの」とされています。
身近な機械の具体例としては、冷蔵庫や洗濯機・自家用車などが挙げられます。
また、普段目にする機会は少ないですが、農業用機械・医療用の精密機械・プラントの大型設備などの工業用途、PCやスマートフォンなどの情報処理用途の機械と、さまざまな業務用機械も存在します。 そして「設計」とは、「建造物の工事、機械の製造などに際し、対象物の構造・材料・製作法などの計画を図面や文書に表すこと」とされます。
つまり「機械設計」とは、「動力を受けて、目的に応じた一定の運動・仕事をするもの(機械)に対して、構造・材料・製作法などの計画を図面や文書に表す行為」と言えます。
近年では、先の具体例に挙げたほとんどの機械が「メカトロニクス」という技術分野に位置します。
メカトロニクス(mechatronics)とは、機械工学(mechanics)と電気工学(electronics)を掛け合わせた合成語で、機械工学分野の機器にICなどの電子工学分野の部品を搭載し、多機能・高性能な機器開発を目的とした技術分野です。
電気(制御)設計が、このメカトロニクス分野において機械に「魂」を吹き込む位置付けにあるとすれば、機械設計は外見やサイズなどの「器」をデザインする位置付けにあると言えるでしょう。

機械設計の重要性

単なる「器」の設計と思って侮ってはいけません。
「機械を設計する」とは、機械の持つ機能・性能・魅力を決定づける重要な工程です。
単に、形状と寸法と材料を決めるだけではないのです。製品の求められる機能を十分に発揮させ、使用者の快適感を左右し、デザインセンスが評価されるほか、会社の技術レベル、社会への取り組み姿勢といったことまでも機械設計の質・内容から判断され得るのです。
そのため、機械設計者に求められる技術は、製図を行うスキルや材料の知識といった「詳細設計」に求められるものだけに留まりません。
デザインから、自然科学、製品の価値や意義を定義させる哲学や経済学といった、非常に多岐にわたる上位の概念も理解していく必要があるのです。
さまざまな知識が必要とされる機械設計ですが、最低限押さえておく必要のある知識は「4力学」「機械要素」「製図」「設計ツール」の4つです。
「4力学」とは、「機械力学・材料力学・熱力学・流体力学」のことで、これらを知らなければ機械の強度計算や性能評価をすることができません。
「機械要素」とは、機械を構成するばねや軸、歯車などを指します。機械要素の使い方を知らなければ、目的を満たす機能を得られなかったり、大きくコストが増加したりします。
「製図」とは、設計図を書くためのルールです。JIS(日本産業規格)やISO(国際標準化機構)に則った規格で図面を書く必要があります。
「設計ツール」には、製図を行うためのソフトウェアCAD(Computer Aided Design)や製造を支援するCAM(Computer Aided Manufacturing)、材料の強度計算をコンピュータで行うCAE(Computer Aided Engineering)などがあります。

機械設計の流れ

機械設計の流れは業界や企業、装置の仕様などによって工程や名称が異なりますが、どのような機械設計でも、大まかには構想設計・基本設計・詳細設計の3ステップで進めていきます。
それぞれについて詳細を見ていきましょう。

構想設計 ~機械のコンセプトを決める工程~

まず初めに行うのが「構想設計」です。構想設計は「概念設計」とも呼ばれ、機械のコンセプトを方向づける工程です。
市場調査・競合分析などのデータから、機械の目的・使用者のターゲット・目標スペック・予算・開発期間・実現可能性・使用環境などについて、関係部署と議論を交わし共有化します。
例えば自動車の場合、どのようなターゲットを設定するのか、そのターゲットに見合ったサイズ・機能・デザインはどのようなものか、価格設定はいくらか、新技術を取り入れる場合その実現性は高いかなどを検討していきます。
検討した内容は「企画書」や「要求仕様書」といった資料として残し、他部署や外注先との認識にズレが生じないようにします。
「大きすぎず、小さすぎず、ちょうどいいサイズ」「キビキビと走る」など、ここで決めたコンセプトがそのままその機械(製品)を象徴する特徴となります。
構想設計は一番最初に行う重要な工程ですが、マーケティングや財務、過去の設計知見や他部署・外注先との交渉力といった複雑で高度なスキルが必要となるため、幅広い知識と経験を持った技術者が求められるでしょう。

基本設計 ~機械の大まかなイメージや機能を決める工程~

次は構想設計よりも具体的なイメージを固めていく「基本設計」へと移ります。 製品および部品のサイズや形状、どのような動きによって求められる機能を果たすのか、動きを行う機構は何を用いるのか、部品やインターフェースの配置はどうするのかといったことを決めていきます。構想設計で決めた要求仕様をより具体的に数値に落とし込んでいく工程とも言えます。 そのため、この段階から強度計算や重量計算なども始まります。「ちょうどいいサイズ」とは具体的に何mなのか、それを構成する部品は何mmになるのか。求められる性能を満足し、破損しない強度を保有しているか、コストは割り当てられた予算に収まるかなど、工学的・数値的な根拠で確認していきます。 「4力学」「機械要素」の知識や、複雑な強度・熱・流体解析をする場合はCAEなども必要になる工程です。 基本設計を進める上では、過去の設計データが大いに役立ちます。そのため、上司や先輩設計者にヒアリングしたり、データベースを活用したりすることで、設計の質とスピードを高めることができます。一方、新しい技術や素材を使用する場合は入念な検証を繰り返すことが必要となるでしょう。

詳細設計 ~機械の形状・仕様を確定させる工程~

基本設計を終えたら、最後は「詳細設計」を行います。すべての機械を構成する部品の仕様を確定させ、図面を描いて後工程に渡す工程です。
「設計」と聞くと、この図面を描く作業をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
図面は大きく部品図と組立図に分けられます。
部品図には、寸法と公差、材料など部品の一品一品に関する情報を記載します。
一方、組立図にはどの部品を使用するか、部品間の寸法、組み立て時の注意点などを記載します。
また、必要な部品を一覧にした部品表BOM(Bills of Materials)の作成も必要です。
BOMには図面番号、設計者、名称、購入品、材質、数量、手配先などを記載します。
4つの基本知識で言えば、「製図」「設計ツール」の2つをメインに使うタイミングです。
ただし、良質な図面を描くには材料と加工の知識なども必要となってきます。「このサイズで±0.01mmの精度は不可能」「この硬度の材料は加工方法が異なるので、形状もこうしてほしい」など、寸法を入れたはいいが「どうやって加工するのか?」といった問い合わせが起きることは少なくないのです。
作図後は責任者によるダブルチェック・トリプルチェックを受け、ミスがないかを入念に確認します。
ここでの小さなミスが後工程で大きな問題となる可能性もあるため、非常に神経を使う工程にもなります。

まとめ

機械設計には力学や製図の知識だけではなく、マーケティングや財務、哲学や経済学といった非常に多岐に渡る知識が必要となります。
そのため、自社内でリソースが足りない場合や技術が不足している場合、設計・製造の外注を検討するのもよいでしょう。
特に初めて製品開発を行う企業は、そのノウハウを蓄積するためにもまずは外注してみることをおすすめします。

執筆者プロフィール: Kamijo
10年以上「ものづくり」に携わってきた機械設計エンジニア。ものづくり・機械設計・生産技術・哲学・歴史・経済が得意な分野。

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