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半導体の構造とは?半導体のトレンドも紹介

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1948年に接合型トランジスタの特許が出願されてから70年以上経ちますが半導体の技術進歩はとどまる所を知りません。現在の半導体基板(ウエーハ)はSi(シリコン)が主流ですが、さらなる省電力化、高機能化を目指しSiC(シリコンカーバイド)をはじめさまざまな素材も出現し技術の高度化が進んでいます。この記事では半導体の役割や構造について、説明するとともに現在の技術トレンドも紹介します。

半導体の役割と構造

半導体とは物質の総称です。熱や不純物を付加することにより導体にも絶縁体にもなる物質を半導体と呼びます。

導体は銅やアルミなどの電気を通す物質、絶縁体はゴムやガラスなどの電気を通さない物質を指します。電気を通す、通さないは電気抵抗率(Ω・cm)で決まっており、10^-6Ω・cmより小さいと導体、107Ω・cmより大きいと絶縁体になります。この間の物質が半導体です。

半導体には代表的なシリコンをはじめ、炭素、ゲルマニウムなどがあります。

先述のとおり、半導体は物質の総称ですが、今日では半導体素子やIC(半導体集積回路)を「半導体」と呼ぶ場合がほとんどです。

半導体素子やICも役割や構造、使われる基盤の種類により名称が変化します。
例えばICは基板材料の違いによりシリコンICや化合物ICと呼ばれます。

シリコンICは基板材料にシリコンが使われ、化合物ICではSiC(シリコンカーバイド)やGaN(ガリウムナイトライド)といった化合物半導体が基板材料に使われます。
このように機能としては同等でも使われる材料による名称の違いも存在します。

半導体素子

半導体素子は大きく分けて受動素子、能動素子があります。

受動素子は抵抗やコンデンサがあり、能動素子にはフォトダイオード、発光ダイオード、トランジスタなどがあります。

それぞれの素子には役割があり、抵抗は電流のコントロール、コンデンサは電気を蓄える働きをします。
能動素子であるフォトダイオードは光エネルギーを電気信号に変換、逆に電気信号を光エネルギーに変換するのが発光ダイオード(LED)です。 トランジスタは信号の増幅機能や電気回路をオン・オフするスイッチの役割を持っています。

従来これらの部品は個別の電子部品として存在し、プリント基盤上に配置・配線されていました。

半導体素子としての抵抗やコンデンサは、シリコンウエーハ(半導体基板)上に半導体素子の成膜や露光、エッジングなどの工程を経て、焼き付けられたものを指します。

機能は従来部品と全く同じですが、微細加工で1μm以下に小型化されています。電子部品の抵抗やコンデンサは小さいものでも10mm程度の大きさなので1万分の1のサイズにすることが可能になりました。

プリント基板を半導体に置き換えることによって以下のメリットをもたらします。
・小型化
・軽量化
・低消費電力化

さらに同じ空間で比較すれば多くの半導体素子を配置することができるので機能をアップできます。例えばパソコンの性能を決めているCPUもICチップの1つですが、それに搭載されているトランジスタの数は年々膨大に増えています。

IC(半導体集積回路)

IC(半導体集積回路)の役割は種類によって決まっており、主に「メモリIC」と「マイコンIC」の2種類があります。

メモリICはさまざまな情報を記録し必要に応じて取り出す仕事をします。
電源を切ると情報が失われる揮発性タイプと記録し続ける不揮発性タイプがあります。

マイコンICはコンピューターの中央演算処理機能や制御機能の役割があります。入出力装置などの周辺機器の制御も行います。

ICの構造をシンプルに表現すると半導体素子の集まりです。多数の受動素子、能動素子を半導体基板上に作り込み、それらを内部配線で相互に接続し1つの機能を実現したものがICです。
1個のICに搭載されている素子数を集積度と呼び、今では1個のICに1000万個以上のトランジスタ素子が載っています。

このような高集積度かつさまざまなメモリICやロジックICが1つの集積回路に集まり大規模な回路になっているものをLSI(Large-Scale Integration)と呼びます。

半導体の技術トレンド

これからの半導体技術は素材開発なくしては発展しないと言われています。

半導体の中でもパワー半導体技術は日本の政府が現在力を入れている開発分野です。

パワー半導体は以下の機能をもっています。

・直流から交流の変換
・交流から直流の変換
・直流を直流に変換
・交流の周期を変換

パワー半導体は、主に演算やメモリ機能として使われるICとは違い、電源の制御や供給に使われます。太陽光発電や風力発電で得た電力を効率的に利用する装置や、ハイブリット車のモータ制御で活躍しています。

こうした電力変換機器ではエネルギーの損失を限りなく0にすることが機能として求められていますが従来のシリコンウエーハを用いたパワー半導体ではエネルギー損失を抑える限界値に迫っており新たな技術の開発が世界的に求められています。

シリコン半導体に代わる材料として注目されているのがSiC半導体(シリコンカーバイド)です。SiC半導体はシリコン半導体と比較してエネルギーバンドギャップが3倍、絶縁破壊電圧が10倍、高周波動作可能、熱伝導率が3倍などパワー半導体として優れた特性を有しています。

さらに耐圧電圧を同じとするならばチップの厚みを1/10程度にできることでオン抵抗低減による低損失パワーデバイス化につながります。

あらゆる電気機器に組み込まれるパワー半導体は2020年現在世界シェアの3割を日本は獲得しています。
2030年までに省エネ50%以上の次世代パワー半導体の実用化・普及拡大を日本政府は進めています。世界市場でシェア4割(1.7兆円)を獲得するために国が研究開発支援をするとともに半導体サプライチェーンの必要な部分に設備投資支援を実施することも発表されています。

出典:経済産業省│半導体戦略(概略)

まとめ

半導体はこれからの科学技術分野で重要なアイテムになっていきます。全ての機械や装置、家電にICが搭載されるのはもちろんのこと、これまででは考えられなかった物にまでICが載る日も遠くはないでしょう。 今まで半導体について「自分には関係がない」と考えていた技術者も否が応でも勉強する必要があり、役割や構造といった基礎知識は身につけていて損はないです。

執筆者プロフィール
ドラフター
中小企業の機械メーカーに勤める現役の機械設計者。機械設計者の為のお役立ちサイト「機械設計者の働き方.com」を運営している。機械設計、メーカーの仕事内容に関する記事を多数執筆

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