1000年後、
人類が目覚めたときの世界。
銀色に輝く流線型のカプセルが開き、永い眠りから覚め、ゆっくりと起き上がる宇宙飛行士。その見た目の姿は、カプセルに自らの未来を委ねた1000年前と同じ若々しさを保ったままだった。そんな時空を超え宇宙を旅するシーンをSF映画で観たことはないだろうか。地球や人類を救うため、あるいは移住の地を求めて、宇宙船に果敢に搭乗する勇者たち。地球を旅立ち、何万光年も離れた銀河の惑星へと向かう。その長い旅の過程では、人間の寿命の常識を越えて命を保つため、主人公たちは「コールドスリープ(人工冬眠)」と言われる手法で冷凍カプセルに入り、人体は何百年あるいは何万年もの永い眠りにつくのだ。
1960年代のAI(人口知能)が宇宙船を支配する物語や、猿が未来の地球を支配している映画など、コールドスリープのシーンは古くから数多くのSF小説やSF漫画で時間や空間を超えるための演出として採用されてきた。
さて、実際のところそれは可能なのだろうか。日本では行われていないが、世界では「クライオニクス(人体冷凍保存)」と呼ばれるサービスがあり、世界中ですでに約350体が冷凍保存されていると噂されている。その多くは現在の医療では治療が不可能な人体を死亡直後に冷凍保存し、未来の医療技術や蘇生技術の発展に夢を託し、技術が確立した未来の時点で解凍・治療することを目指している。
食糧危機を救う!?
世界の種子を冷凍保存する、
現代版「ノアの箱舟」。
人体から話は変わるが、事実として「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」という施設が、ノルウェー領スヴァールバル諸島のスピッツベルゲン島にある。この種子銀行は、現代版「ノアの箱舟」とも称され2008年2月に開設、2018 年現在、世界各地から提供された種子を100万種以上を保管。
地球上のあらゆる種子を冷凍保存し、将来訪れるかもしれない世界の食糧危機、人類滅亡の危機に備えているという。この世界最大の施設にある貯蔵庫は、世界中の種を数百年、場合によっては数千年もの間、一定温度で保存できるよう設計されている。温度は-18℃、種子の生存能力を維持する世界基準の値となっている。そして、貯蔵庫を-18℃に冷却するだけでなく、入り口に続くトンネル内も-10℃に冷却。施設全体を常に同条件にキープし続けることのできる温度・湿度管理、高度なセキュリティを保ち、未来の人類を救う「ノアの箱舟」となる日を待っているのだ。
最先端の保冷技術で旨さと鮮度を保つ日本酒セラー。
それは、日本酒の「ノアの箱舟」なのか。
アルテクナでは、自社の先進的な保冷技術とデザイン力によって “MIYABINO”という、例えるなら日本酒の「ノアの箱舟」を製作したことがある。それは幾年にも渡って日本酒の旨味と鮮度を保つことのできる技術の粋を結集した世界初といえる日本酒セラーだ。
従来のワインセラーは5〜20℃で温度管理されているが、日本酒は種類・製法を問わず長期保存する場合はマイナスの温度帯が必要であり、かといって冷凍するわけにもいかない。つまり、凍りそうで凍ることのないマイナス5℃を長期的に保ち低温管理することが求められる。この日本酒セラーはワインセラーには無かったマイナス5℃で保存できる冷却性能を持ちながら温度誤差1℃以内で厳密な温度管理ができ、さらに左右2部屋を設けて各部屋で独立した温度制御ができるようになっている。
その世界初の商品開発にはさまざまな課題や困難があり、発想の転換によって、多くの壁を越えて誕生したという。そう、まさに“Think unique”を具現化し、チャレンジを続けるアルテクナの技術者とデザイナーたちの叡智と技術の結晶として、これまでにない日本酒専用セラーが生まれたのだ。
それは、日本の技術と文化の象徴として“MIYABINO”と名付けられ、その保冷庫の中では日本酒が今も世界のそこかしこで静かに眠りに付いている。
Special Interview
開発マネージャーが語る
日本酒のコールドスリープ技術
“MIYABINO” 開発秘話
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